アイルランド・ダンダルク出身の障害者ゴルファーに、ブレンダン・ローラー(22歳)というアマチュアがいる。彼は世界障害者ゴルフランキング3位で、昨年のISPSハンダ・ワールドカップの障害者ゴルフ競技において、優勝チームの一員として戦っていた。
そして今回、北アイルランドで開催のISPSハンダ・ワールドインビテーショナルにも出場。残念ながら予選通過はならなかったが、今週はプロアマで、世界的な大スター、ナイル・ホーラン(ワンダイレクションのメンバー)と同組で回って親交を温め、試合ではヨーロピアン・チャレンジツアーのプロに混じって、素晴らしい経験を積んだようだ。
「僕は障害者ゴルファーですが、幸いあまりハンデを感じていません。その上、ナイルや他にもたくさんの有名人、セレブたちと知り合うことができて本当に幸せです。祖父が僕に合うようにクラブをカットしてくれ、ゴルフをはじめましたが、ショートゲームを一生懸命練習したんです。僕の得意なゲームはやはり小技ですね」
彼は上半身のみ成長し続けたが、12〜13歳の頃に下半身(足)の成長が止まったという。身長は現在150センチ足らずだが、ドライバーの飛距離は260ヤードと、障害者ゴルファーの中では比較的飛ぶほう。もともとは160ヤードしか飛ばなかったが、筋トレをやり、飛距離を伸ばしたというから驚きだ。
障害者のトーナメントにはここ2年くらい出場しているが、ヨーロピアンツアーにも時々招待で出場しているそうで、徐々に自分の存在をツアープロたちにも知られている。今年は障害者のトーナメントに4〜5試合、ヨーロピアンツアーに2〜3試合、推薦で出場しているローラーだが、ヨーロピアンツアー・レース・トゥ・ドバイの最終戦「DPワールド・ツアー選手権」開催週には同時に障害者ゴルファーの試合(EDGAドバイファイナル)も金・土の2日間で開催されることになっている。たった8人しか出場できない狭き門だが、ランク上位者ゆえ彼の出場も決まっている。
今年の全英オープンチャンピオンで、同じくアイルランド人のシェーン・ローリーには昨年のISPSハンダ・ワールドカップと同コース、同日程で開催された障害者の試合に出場した際に知り合い、それ以来、彼の使用するボールやキャップなどを分けてもらっているという。
「シェーンはとてもいい人ですよ。今年、全英オープンには土・日に観に行きましたが、彼があのように勝てて本当に嬉しかった。あとでメッセージを送りました。彼は僕を助けてくれていますし、尊敬しています」
そして30年異教前から障害者ゴルファーを支援するISPSの半田晴久会長には感謝の念がたえないという。
「こうして僕たちのような障害者がゴルフをする環境を作ってくれ、支援してくれるのはとても助かっています。僕もISPSアンバサダーとして、障害者ゴルフの発展に貢献できるように頑張りたいですね。半田会長にお会いして、感謝の意を伝えたいです」
現在はアマチュアだが、アマチュアのステータスのまま、世界中の競技に出るのは金銭的に難しいという。プロ入りするのか聞いてみたところ、
「まだわかりません。でも、来年はもっと出場できる試合数も増えるので、このままアマチュアのままいるのも正直厳しいものがあります。もちろん賞金をもらえれば、転戦するのに助かりますが、賞金をもらうことで同じ障害者ゴルファーたちを助けたいという気持ちもある。複雑ですね」
とローラー。今年の5月、ヨーロピアンツアーでも障害者ゴルフに対してのサポートを公式にアナウンス。また、ヨーロピアンツアーCEOキース・ペリー氏から半田会長に対し、長年の障害者ゴルフへの貢献をたたえる授賞式がブリティッシュマスターズの会場(ヒルサイドGC)で行われた。ISPSが始めた障害者ゴルファーへの支援の輪がヨーロピアンツアーにも広がり、近い将来、アメリカやアジア諸国のツアーでも日常的なものになるかもしれない。そのパイオニア的な重要な任務をローラーは担っている。
(2024年10月23-25日開催) ISPS 中山徹記念ゴルフトーナメント